
「鍼って痛そう」という声は、初めての方からよく聞きます。結論から言うと、鍼灸で使う鍼は注射針とは異なり、痛みや刺激の感じ方も違います
私自身、痛い鍼は苦手です。だからこそ、患者さんの感じ方に合わせた、できるだけ負担の少ない施術を大切にしています。
鍼灸で使う鍼はどのくらい細い?
鍼灸院で使う鍼は、とても細いものです。たとえば2番鍼の太さは約0.18mmです。髪の毛の太さには個人差がありますが、およそ0.1mm前後とすると、その2倍弱ほどです。
鍼が細いことも、刺すときの刺激を抑えるための工夫のひとつです。
体に鍼を刺すときには、「鍼管(しんかん)」という細い管を使う方法があります。鍼管に鍼を入れ、鍼の頭を軽くはじいて刺すことで、皮膚への刺激に配慮しています。
痛みと「響き」は別の感覚
鍼を刺したとき、ズーンと重だるい感じやじんわり広がる感覚が出ることがあります。これは「得気(とっき)」や「響き」と呼ばれ、鍼灸では大切にされてきた感覚です。研究でも、鍼で生じる感覚は重だるさや圧迫感が多く、鋭い痛みは一部の人に一瞬出る程度と報告されています。
刺さない鍼もあります
私は接触鍼をよく使います。刺す用の鍼を、体に刺し入れずにツボに当ててとめる方法です。この手技では鍼管は使いません。刺していないので、刺されるような痛みはありません。
散鍼(さんしん)という手技
散鍼は、素早く鍼を何度も皮膚に当てていく手技です。反対の手も素早く動かしながら、ツボの様子を探っていきます。
体の状態と手技の強さが合っているときは、気持ちよくてうとうとしてしまう方もいます。一方で、チクチクと感じることもあります。そのため施術の前に「チクチクしたらお伝えください」と一声かけ、感じたときはその場で調整します。我慢する必要はありません。
お子さんには刺さない鍼で
お子さんには、どうやっても刺さらない形状の鍼を使います。撫でるようにさするので、痛くありません。
太くて長い鍼はあまり使いません
鍼灸師の中には、太くて長い鍼を使う方もいます。私はあまり使いません。私自身が痛い鍼を苦手だからです。どうしても必要な方には使う場合もあります。
神経が過敏になっている方へ
事故のあとなど、神経が過敏になっている方もいます。刺激の感じ方はその方の状態によって違うので、状態に合わせて施術します。
初めての鍼灸が不安な方へ
鍼の刺激の感じ方は、人によって異なります。同じ方でも、その日の体調によって感じ方が変わることがあります。
私自身、痛い鍼は苦手です。だからこそ、患者さんがどのような刺激を感じているのかを確認しながら、無理のない施術を心がけています。
初めての方や注射が苦手な方は、遠慮なくお伝えください。刺さない鍼から始めることもできます。
訪問施術でも同じように、お体の状態や刺激の感じ方を確かめながら進めていきます。
参考文献・出典
- 愛媛県立衛生環境研究所(愛媛県庁)「はり・針・鍼(はり)について」ニュースレター vol.05(2020年9月号):https://www.eph.pref.ehime.jp/epch/guide/asset/newsletter_vol05.pdf
- 小池謙造「超高圧電子顕微鏡による毛髪構造解析」顕微鏡 43(4), 2008(日本顕微鏡学会):https://microscopy.or.jp/jsm/wp-content/uploads/publication/kenbikyo/43_4/pdf/43-4-258.pdf
- “Characterization of the ‘deqi’ response in acupuncture.” BMC Complement Altern Med. 2007;7:33:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2200650/
- (教科書の書名・版・該当ページをここに追加)
